集団的自衛権の行使容認に関する憲法解釈変更の
閣議決定に関して内閣総理大臣へ送付した手紙

以下は、集団的自衛権の行使容認に関する憲法解釈変更の閣議決定を受けて、日本バプテスト同盟理事長が安倍晋三内閣総理大臣に宛てて送付した手紙です。


内閣総理大臣  安倍 晋三 様

集団的自衛権の行使容認に関する憲法解釈変更の閣議決定に反対します。

 わたしたち日本バプテスト同盟は、1873年、アメリカの宣教師たちによって生み出されたキリスト教団体です。70年前の第二次世界大戦時、わたしたちの団体は、聖書の教えに反して、アジアの侵略戦争に加担し協力するという経験を持っています。同じアジアのキリスト者に天皇崇拝が強要された時、わたしたちはその苦しみの叫びを無視していました。戦後、わたしたちはこの過ちを痛悔し、1992年8月26日「日本バプテスト同盟『戦争責任』に関する悔い改め」を、2011年7月21日「戦争に加担しない平和の道を求める」アピールを総会決議し、創造主である神の前に悔い改めを祈りました。
 さて、2014年7月1日、日本政府は集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更を閣議決定しました。これに先立つ、2012年4月27日に示された自由民主党の『日本国憲法改正草案』によると、第九条の2に「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。」と、現行憲法にはない「自衛権」を提案しています。今回の集団的自衛権の閣議決定は、そもそも戦後日本における「自衛権」についての国民的議論がなされたうえでのことなのでしょうか。自衛権を国際法上の権利として、一般的には正当防衛のように考えられていますが、日本国憲法第九条は、憲法に記述のない自衛権に関しても、国際紛争を解決する手段として、陸海空軍その他の戦力は、永久にこれを放棄すると解釈できます。憲法九条は、先の大戦において日本国内外を問わず、戦闘員、非戦闘員の区別なく、多くの尊い戦争犠牲者の上に立てられた、恒久平和を念願する戦争放棄の誓いです。
 戦後日本は、朝鮮戦争勃発に対応して1950年に警察予備隊が設置され、1954年7月1日には自衛隊が設置されました。更に1991年の湾岸戦争後のペルシャ湾への掃海艇派遣から、自衛隊の海外派兵が始まり、2001年に起きた米国同時多発テロに対応して制定された「テロ対策特別措置法」に基づき、アメリカのアフガニスタンのタリバン政権に対する戦闘の、後方支援に当たる自衛隊の補給支援活動が行われました。こうした一連の日本政府の働きを見ても、政府主導の既成事実の積み重ねによって、今回の集団的自衛権の行使容認につながっていることがわかります。
 日本国は、国民に主権があります。閣僚に主権があるのでも政権与党にあるのでもありません。集団的自衛権の行使容認は、武力を用いないとする日本国憲法の否定です。現実問題として、近隣国との領土問題、核・ミサイル実験など、国民の安全に関わる重大事態を、政府は想定していると理解します。しかし、集団的自衛権の行使容認という一足飛びの解釈、一部閣僚と政権与党の決定は承認できません。今回政府が行った集団的自衛権の行使容認に関する憲法解釈変更の閣議決定に対して、日本バプテスト同盟は強く反対します。憲法に書かれていない「集団的自衛権」は認められませんので即時撤回することを求めます。「集団的」以前に、日本国の自衛権の問題を、国民全体の議論として取り上げることを政府に要求致します。

聖書
「主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。彼らは剣を打ち直して鋤と し、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず もはや戦うことを学ばない。」 イザヤ書2章4節 (日本聖書協会 新共同訳聖書より)

2014年7月7日


〒169−0051 東京都新宿区西早稲田 2−3−18
TEL 03-3202-0053 FAX 03-3202-0054
日本バプテスト同盟       
理 事 長 山本富二    
宣教部長 橋 彰    


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